2020/10/08 11:10

インド生活での、好きな生地での洋服作りは、ほとんど地元のテーラーさんに
お願いしていました。自分でも、既製品の自分の好きな形に合わせて、
簡単なデザインのトップは何度か手縫いで作ってみたのですが、やはり何か
歪なところが気になり、需要と共有の思想の基、「自分の不得手な事はその道に
通じている人にお任せする」スタンスでいました。

ですが、浴衣だけは2着自分で仕立てました。
(インドで仕立てられる人はあまりいませんし。)

1枚は、カラムカリ(kalamkari)のカディ・コットン。
”kalamkari’はペルシャ語が由来で、”Kalam"は”ペン”、”kari" は
”クラフトマン・シップ”を意味
します。長い工程を経て準備をした布地に、
職人の手によって竹のペン(又はナツメヤシの枝)
で精密に描かれた絵、
天然の色が載せられ、生地が完成するまでに
は、23の工程が必要とされます。

それがカディとなると、つまり糸を紡ぐところから始まる、生地作りの最初
から最後までが全て手作業で行われる芸術品となります。そんな生地が簡単に
手に入ってしまうなんて、本当に有難い機会を与えてもらっていました。


着心地も、存在感のある柄も良く、インド人の友達にも好評でした。

そして、もう1枚はイカットで。

東南アジア全般でよくみられるイカットは、日本の絣と似た柄も沢山あるので、
浴衣にぴったりでした。私が選んだこの生地は、薄くてとても柔らかく、その
通気性の良さは、プネの暑さが苦痛にならないほどでした。
ちなみに、帯もカディ・コットンで縫い上げました。

インドの生地は基本的に幅が114㎝なので、6mも買うと1.5mくらいは余るので、
余った生地でまたワンピースやトップ、小物を仕立てたりしていました。

3月に帰国して以来、こぎん刺しや、小物作りは続けていたのですが、やはり
テーラーの不在が私のワードローブに影響を与えていました。
日本にも熟練された、才能あふれるテーラーさんが沢山いるのは知っていますが、
普段着る洋服をすべてお願いできるような余裕はないのが、悲しい現実・・・。

欲しい服が見つからないのと、好きな生地で好きな形の洋服が作れない、という
ストレスに悩まされていました。
(しかも、お気に入りの洋服たちは全てインドに置きっぱなし・・・)
そんな時、いつもの「欲しいものは自分で作る」精神が湧き出てきました。

それが、この "erisha" を立ち上げた理由の1つでもあります。

インドに滞在中に、オーガニック・カディを取り扱う業者を探しまわり、
「ここだ!」という勘の基、連絡を取ってグジャラート州のアメダバードまで飛び、
実際に会って話して、商品の良さと会社の信頼性を確認しました。
それ以来、良い信頼関係を維持しているその会社に、いつもカディの生地と私が
デザイン・考案したものの商品化をお願いしています。

こんなコロナ禍の最中でも、ちょうどインドからの航空便が再開したタイミングで、
迅速に商品を日本に送ってくれました。それがお店で紹介している生地と洋服です。

せっかくの美しい生地達に、たいして腕も良くない私が鋏を入れるのには躊躇した
のですが、良いものだからこそ、私自ら何かを作って皆様にご紹介しなければ!
という気持ちはもちろんですが、単純に「家でも外でも履ける、気持ちのいい楽な
パンツが欲しいなー」という気持ちの方が大きかったのが事実です(笑)。

今回の洋服作りに私が選んだ生地はこれです。

パンツやロングのスカートに映える、不揃いのストライプ。

今回は慎重に、「手縫いで洋服作り」用の本を図書館から借り、それを基に型紙を作成。

ガウチョ・パンツに必要な生地は約2m。必要な4枚を裁断してみると、1m×75㎝ほどの
生地が余りました。(生地の幅は約114㎝)です。


ポーチやマスク等、ここからまた色々な小物が作れそうです。

ただ4枚の生地を組み合わせて縫う、というシンプルなデザインだったので、2日かからず
完成しました。


本当はウエストをゴムではなく紐にしたかったところを、今回は楽な方を選びましたが、
変なギャザーもできず、綺麗な形に仕上がりました。

これからどんどんと寒くなってくる日本では、一枚で着るには薄いのですが、これに
カディではない裏地を付けたり、中にタイツなどを履いてしまったら、カディとして
着る意味がなくなってしまうので、私は薄かろうがこのまま履いて、肌が感じる気持ち
良さを楽しんでいます。部屋着や寝具、ヨガウェアとして最適だと思います☆


オリジナルのシンプルなデザインのオーガニック・カディコットンのトップと、
現地で直接買い付けに行った、カディで有名な非営利団体 ”Womenweave” の
ショールと合わせてみました。

普通のコットンに比べたら、少し値が張ってしまうカディ(申し訳ありません・・・)
ですが、オーガニックコットン、カディが出来上がるまでの工程や、作り手さん達の
労力、そして日本に届くまでの背景を考えると、その価値は測りきれません。

私にできることは、多くの人にカディを知って、使ってもらうためにも、自分の生活の
一部として、惜しむことなくどんな場面にでもカディを愛用し続けて行くことだと
思っています。